飲料大手企業(サントリー・キリン・アサヒ・サッポロ)の違いを解説

今回は『 飲料大手4社(サントリー・キリン・アサヒ・サッポロ)』を比較します。

飲料企業についての記事です。学生のみなさんにとって、商品は身近で馴染み深いけど、会社については深く考えたことがないだでしょう。各社特徴があって、直近の課題も違っていて面白いです。普段はビール飲んでウェイウェイ言ってるだけの大学生も、少しは賢い視線から飲料メーカーを見てみましょう。




結論ファースト

結論は以下の通りです。

  • サントリーは事業のバランスが良好。グローバル企業を目指してアメリカのビーム社を巨額買収。その成功が今後のカギ
  • キリンは海外展開で他社よりリードで業績好調、2020年度は悲願のビールシェアNO1に返り咲き。グローバル企業を目指して豪州・ブラジルの企業を100%子会社化
  • アサヒはスーパードライを武器にで国内ビールシェア一位。海外展開の遅れが目立つ。欧州のビール会社を買収して攻勢を目指す。
  • サッポロ国内酒類事業と不動産事業が二大収益源。規模は他の3社に比べて小さく、独自路線を進む。

飲料大手4社(サントリー・キリン・アサヒ・サッポロ)を比較

今回は、以下のトピックでを比較します。

  • 各社のセグメントを比較
  • 5つのランキングで比較
  • 各社の最近の事情を紹介

各社のセグメントを比較

サントリー

サントリーのレポートによると以下の3つの事業分野が紹介

  • 飲料・食品
  • 酒類
  • その他

【飲料・食品】

ウーロン茶、天然水、BOSS、C.Cレモン、伊右衛門、オランジーナあたりはご存知の通りです。

【酒類】

非常に色んな酒を扱ってます。ウイスキーの「響」「山崎」「角」などは有名えすが、2014年にアメリカの大手ウイスキーメーカーであるビームを約1兆6000億円という莫大な金額で買収した。“JIM BEAM”というバーボンを見たことないでしょうか?他にもスコッチウイスキーやリキュール類、ジンなど色んな酒を扱っています。

もちろん、「プレミアムモルツ」、「金麦」、「オールフリー」といったビール類は超有名だし、「ストロングゼロ」や「ほろよい」のようなチューハイもご存知の通り。さらに、実は国内外でワイン事業も手掛けています。

【その他】

ここが一番意外です。「響」、「燦」、「パパミラノ」などのレストランを手掛けるダイナック、喫茶店プロント、そしてなんとハーゲンダッツもサントリーの傘下です。また、実はセサミンのような健康食品も売っています(若い就活生には関係ないか)。

セグメント別売上・営業利益構成比は以下の通り。ともにバランスが良いのが見て取れる。

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キリン

キリンのレポートによると以下の4つの事業分野が紹介

  • 日本綜合飲料
  • 海外綜合飲料
  • 医薬・バイオケミカル
  • その他

【日本綜合飲料】

キリンは酒・ジュースという切り口じゃなくて、国内・海外という切り口(後述するが海外展開に注力)。

ビールだと「一番搾り」、「キリンラガー」、「淡麗」、チューハイだと「氷結」、ソフトドリンクだと「午後の紅茶」、「生茶」、「キリンレモン」あたりが有名で「小岩井」も実はキリンです。

【海外綜合飲料】

オセアニアのライオン社、ブラジルのブラジルキリンという会社が子会社にある。ブラジルキリンは現在苦戦しており、立て直しが課題。

【医薬・バイオケミカル】

ここは『協和発酵キリン』という会社がやっています。元は協和発酵という会社でしたが、キリン傘下のキリンファーマとくっついて2008年にキリングループの傘下に入りました。製薬とアミノ酸やグルタミン酸の発酵生産を行っています。

キリンのセグメント別売上・営業利益構成比は以下の通り。売上はバランスがいいものの、稼いでいるのは一番売上が小さい医薬・バイオケミカルです。

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アサヒ

アサヒのレポートによると以下の4つの事業分野が紹介

  • 酒類事業
  • 飲料事業
  • 食品事業
  • 国際事業

【酒類事業】

なんといっても「アサヒスーパードライ」が超有名です。また、過去にNHKの朝ドラ「マッサン」が放送されたが、あれのモデルになった竹鶴政孝が創業したニッカウヰスキーという会社。現在ではアサヒグループの傘下です。

(管理人の印象では)チューハイは他と比べて有名なブランドは少ないです。

【飲料事業】

ソフトドリンクだと「三ツ矢サイダー」、「缶コーヒーWONDA」、「十六茶」、「カルピス」あたりが有名。

【食品事業】

実は色々やっている。知名度が高いのは「ミンティア」、「一本満足バー」、「エビオス錠」、「ディアナチュラ」などで、その他にも健康食品を色々手掛けています。

【国際事業】

アサヒは海外進出で出遅れました。2016年にヨーロッパのビール会社4社を3300億円で買収し、海外進出に力を入れ始めたが、今後どれだけ利益貢献させられるかは未知数です。

アサヒのセグメント別売上・営業利益構成比は以下の通り。酒類に偏っていて、さらに言うとスーパードライに偏っています。国内ビールで圧倒的に強いのですが、良くも悪くも一本足打法と言えます。

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サッポロ

サッポロのレポートによると以下の4つの事業分野が紹介

  • 国内酒類事業
  • 国際酒類事業
  • 食品・飲料事業
  • 外食事業
  • 不動産事業

【国内酒類事業】

ビールの「黒ラベル」、「ヱビス」、「麦とホップ」が有名。チューハイやワイン、洋酒などもやってます。有名どころだと「バカルディ」が挙げられます。

【国際酒類事業】

情報が少なくてよくわからない。サッポロのホームページによると「アメリカでアジアのビールとしてNo.1の地位を占めるのはサッポロブランド」らしいです。

【食品・飲料事業】

「キレートレモン」、「ポッカレモン」、「アロマックス」あたりが有名。また、コーンポタージュを筆頭にスープも売っています。

【外食事業】

都内の人以外は馴染みがないかもしれませんが、「銀座ライオン」、「ヱビスバー」などをはじめとして居酒屋を展開しています。

【不動産事業】

「恵比寿ガーデンプレイス」と「サッポロファクトリー」の2つの複合施設およびオフィスビルなどの運営のほか、不動産開発事業を積極的に展開。

正直やや影の薄い感じがするサッポロですが、セグメント別売上・営業利益構成比を見てみると面白い。国内酒類事業が儲かっているのはわかるとして、不動産事業が大きな収益の柱となっています逆に言うと、国際酒類事業、食品・飲料事業、外食事業は全然儲かっていません。

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5つのランキングで比較

以下、5つのランキングで比較します。

  • 売上高
  • 純利益
  • ビールシェア
  • 清涼飲料販売シェア
  • 海外売上高比率
注意
2019年に発表された(2018年度実績)データが中心です。
売上高

ビール業界 売上高ランキング(2018 – 2019年)

  1. キリンビール:1兆213億円(前期比3.3%増)
  2. サントリー:1兆159億円(前期比±0%増)
  3. アサヒグループ:9,914億円(前期比4.1%減)
  4. サッポロ:2,508億円(前期比4.1%減)

 

アメリカのビーム社を取り込んだサントリーが伸びています。サッポロは他と比べて群を抜いて規模が小さいのが分かります。

純利益

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図:2016-18は加筆予定

ビール業界 純利益ランキング(2018 – 2019年)

  1. アサヒグループ:1969億円
  2. サントリー:1858億円
  3. キリンHD:1609億円
  4. サッポロ:164億円

サントリーが2013年だけ飛び抜けてますが、これは子会社の『サントリー食品インターナショナル』を上場したことによる特別利益のおかげです。ちなみに、サントリーは持株会社制なですが、本体のサントリーホールディングスは非上場で、主軸の事業会社であるサントリー食品インターナショナルの方が上場されています(ややこしいな)。

キリンは2015年度は上場以来初の最終赤字に転落。ブラジルキリンは、元は「スキンカリオール」という現地の会社で、約3000億円で買収したのだが、予想したほど利益が出ていないので減損に至ったそうで。これが赤字になった理由であるそうです。

ビールシェア

こちらのページによると、2020年上半期のシェアは以下の通り。

  1. キリンビール:37・6%(前年上期は35・3%)
  2. アサヒビール : 34・2%(前年上期は36・7%)
  3. サントリー:16.8%
  4. サッポロ:11.4%

尚、2020年上半期(1月~6月)のビール類商戦で、シェア(市場占有率)1位メーカーが入れ替わったと推測されています。新型コロナ禍の巣ごもり消費増加が影響だそうで…。ちなみに。2018年度ビール販売量5.8%減少 国内ビール市場は10年連続で縮小傾向とあり、長い冬が続いております。

清涼飲料販売シェア

こちらのサイトから、2018年度の清涼飲料販売シェアのランキングを見てみましょう。

【出典】アサヒグループ IR資料

  1. コカ・コーラグループ 26%
  2. サントリー食品インターナショナル 22%
  3. アサヒ飲料 14%
  4. 伊藤園 12.0%
  5. キリンビバレッジ 10.5%
  6. ダイドードリンコ 3.0%
  7. 大塚ホールディングス 3.0%
  8. カゴメ 2.3%
  9. ポッカサッポロフード&ビバレッジ 2.3%
  10. JT 1.6%(※既に撤退)

皆さんは既にお気付きだったかもしれませんが、実は本記事では、コカ・コーラについて解説していません。というのも、コカ・コーラは全国各地に展開するボトラーと呼ばれる会社が日本コカ・コーラから原液を買い、商品を製造して売るという特殊なビジネスモデルで、日系メーカーと比較しにくいためです。

ただ、近年は2位のサントリー食品インターナショナルに追い上げられていて、戦略の見直しが必要となっているようです。

海外売上高比率

最後に、海外売上高比率のグラフをこちらのサイトから借りてきました。海外比率を集計しているサイトが少ないので、就活生はIR資料を読んで分析してください。就活生に大人気企業ですので、このあたりまで調べておけば良いかと思います。

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これまで述べてきた通り、海外進出ではキリンがリードしています。サントリーは13年のビーム社の買収により一気に伸びました。アサヒは一番出遅れています。2020年度も大きな動きはないので、この傾向が頭に入っていれば良いかと。

各社の最近の事情を紹介

サントリー

ビーム社は1兆6000億円という超巨額の買収です。向こうもデカい組織だけに、きっちり文化の違いまで統合するのは大変でしょう。よって、両社の人材交流を活発にしたり、ブランドの整理をすることで、まずは統合完璧に成功させることが目前の課題です。

キリン

繰り返し述べてきたように、足を引っ張っているブラジルキリンの立て直しが最優先課題です。海外展開でいうと、まだまだ成長余地のあるミャンマーでの事業が今後の躍進のカギとなるでしょう。

アサヒ

中期経営計画を読んでも、正直当たり前のことしか言っていません。当面は最近買収したヨーロッパのビール4社を上手くマネジメントすることになるでしょう。長期的には海外売上高比率を上げる必要があり、アサヒ自身も「日本発の「強み」を活かすグローバルプレイヤーとして独自のポジションを確立する」と言っています。

就活生はアサヒがどう海外展開するべきか自分の意見を言えるようにしておくといいかもしれません。会社の動きをきっちりフォロー出来ている就活生は1.5流くらいで、その先の展開について自分の考えまで述べられたら一流である(もちろん社員レベルの意見を求められているのではなく、出来るだけ論理的かつ主体的に考えられていればよいです)。

サッポロ

儲かっていないセグメント(事業)を効率化することが必要です。国内酒類事業では“「オンリーワンを積み重ね、No.1へ」をビジョンに掲げ、「感動創造企業No.1」を目指します”と言っていて、規模では同業他社と比較にならないので、独自路線を歩んでいくことになるかと思います。20年は新型コロナによる外出自粛で業務用ビールの売上が大幅激減。業績苦戦。

これまで見てきたように、サッポロは他社とは規模も方向性も異なるので、飲料業界を一通り受ける就活生は志望動機を考える際、サントリーやキリンとは全く違うサッポロならではの魅力を言えるようにしておきましょう。

まとめ

今回は『 飲料大手4社(サントリー・キリン・アサヒ・サッポロ)』を比較しました。

  • サントリーは事業のバランスが良好。グローバル企業を目指してアメリカのビーム社を巨額買収。その成功が今後のカギ
  • キリンは海外展開で他社よりリードで業績好調、2020年度は悲願のビールシェアNO1に返り咲き。グローバル企業を目指して豪州・ブラジルの企業を100%子会社化
  • アサヒはスーパードライを武器に10年連続で国内ビールシェア一位。海外展開の遅れが目立つ。欧州のビール会社を買収して攻勢を目指す。
  • サッポロ国内酒類事業と不動産事業が二大収益源。規模は他の3社に比べて小さく、独自路線を進む。

今回紹介した飲料業界をはじめ、食品、化粧品といった身近な消費財を売っている企業に興味のある人は、マーケティングを学ぶべきです

商社・テック系メーカー・金融業界・IT業界などは世界情勢、時代のトレンドの勉強が大事ですが、BtoCの消費財メーカーの場合、限られたパイでいかにシェアを確保するか。マーケティングを学び、PRの戦略、ブランドの作り方などを比較することが大事であると思います。

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